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海老原 健一; 杉山 優理*; 松本 龍介*; 高井 健一*; 鈴土 知明
Metallurgical and Materials Transactions A, 52(1), p.257 - 269, 2021/01
被引用回数:9 パーセンタイル:51.51(Materials Science, Multidisciplinary)応力腐食割れの原因の1つと考えられている水素脆化に関し、近年、材料の変形時に水素により過剰生成した空孔が直接の原因と考える水素助長ひずみ誘起空孔モデルが提案されている。しかし、その定量的考察はあまりなされておらず、誘起空孔の挙動の定量的評価が必要である。このことから、本研究では、水素添加と同時にひずみを与えた純鉄の薄膜試料の水素熱脱離スペクトルを、空孔及び空孔クラスターの挙動を考慮したモデルでシミュレーションした。モデルでは、9個の空孔からなる空孔クラスター()までを考慮し、空孔及び空孔クラスターの水素トラップエネルギーとして、分子静力学で見積もった値を用いた。また、拡散に関するパラメータも原子レベル計算で評価した値を用いた。結果として、モデルは、全体としてスペクトルを再現し、時効処理の温度に対するスペクトルの変化も再現した。一方、実験との2つの特徴的な違いも現れ、その考察から、及びの拡散はモデルより遅いこと、また、水素と共にひずみを与える際に、空孔クラスターも生成されることの可能性が見出された。本モデルは、照射で生成した空孔の挙動の考察にも応用可能と考える。
知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 石川 法人; 神原 正*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 193(1-4), p.248 - 252, 2002/06
被引用回数:2 パーセンタイル:18.93(Instruments & Instrumentation)鉄における電子励起効果について欠陥生成に焦点を絞って議論する。鉄薄膜試料(厚さ~200nm)に低温(~77K)で2MeV電子線,~1MeVイオン,~100MeV重イオン,GeV重イオンを照射して、そのときの電気抵抗の変化から試料への欠陥蓄積挙動を系統的に調べた。照射中の欠陥蓄積挙動を解析することにより、各照射粒子に対する欠陥生成断面積が得られた。電子線と~1MeVイオンの効果との比較により、~100MeV,GeV重イオンにおける電子励起の欠陥生成断面積への寄与分を抽出することができた。比較的高い電子励起密度をもたらすイオンでは、電子励起による欠陥生成が支配的になり、さらにその断面積は、電子的阻止能よりも初期イオン化率によってうまくスケーリングされることがわかった。このことは、「クーロン爆発」が欠陥生成をトリガーできることを示唆している。
知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 石川 法人
Journal of Nuclear Materials, 271-272, p.236 - 240, 1999/00
被引用回数:8 パーセンタイル:53.62(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉に用いられる材料は常に放射線に曝されるため、その照射挙動を調べることは重要なことである。これまでFCC金属については電子線、イオン、中性子照射での挙動が調べられているが、BCC金属については電子線、中性子照射がおもに行われ、イオン照射はあまり行われていない。そこで今回、代表的なBCC金属である鉄について低温でイオン照射を行い、そのときに導入される格子欠陥の蓄積挙動を調べた。スパッタリングでサファイア基板上に作製した鉄薄膜(厚さ~200nm)に0.52.0MeVのH,He,C,Ne,Arを80Kで照射し、そのときの電気抵抗変化をその場測定した。導入された欠陥の照射量依存性を示す曲線から、欠陥生成断面積、欠陥消滅断面積、損傷効率といった基礎データが各イオンについて求められた。一次はじき出し原子の平均エネルギーが大きくなるにつれて、損傷効率は減少していき~0.3でほぼ一定になる傾向が得られた。
知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 石川 法人
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., 504, p.221 - 226, 1998/00
従来、金属の照射損傷は入射粒子とターゲット原子との間の弾性的相互作用のみで起こると考えられてきたが、最近十年間で、高エネルギー(100MeV)重イオン照射による高密度電子励起に起因する原子変位がFCC金属結晶中で起こりうることが発見された。また、BCC金属である鉄をGeVイオンで照射したときにも原子変位が観測されている。今回は、100MeV領域の重イオン、1MeV領域のイオン及び2MeV電子線を鉄薄膜に低温照射して格子欠陥を導入し、そのときの電気抵抗変化をその場観測した。各照射での欠陥蓄積挙動の違いから照射中の欠陥生成及び欠陥消滅における電子励起効果を評価した。その結果、高エネルギー重イオン照射において高密度電子励起によると思われる欠陥生成及び消滅(照射アニーリング)が観測された。
石川 法人; 知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 鶴 浩二*; 道上 修*
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., 504, p.171 - 175, 1998/00
高温超伝導体EuBaCuOyに100Kにおいてあらゆるイオン(Cl,Ni,Br,I,90-200MeV)を照射し、電気抵抗率の照射量依存性をその場測定した。その結果、Cl,Niイオン照射した時には、抵抗率は、照射量の増加に伴い飽和傾向を示し、Br,I照射の時には、発散傾向を示した。これらの曲線の違いを、試料に導入された粒状の抵抗率の高い領域を仮定することによって、統一的に説明することができた。
石川 法人; 知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 前田 裕司; 鶴 浩二*; 道上 修*; 神原 正*; 三田村 徹*; 粟屋 容子*; 寺澤 倫孝*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 135, p.184 - 189, 1998/00
被引用回数:15 パーセンタイル:73.06(Instruments & Instrumentation)高温超伝導体EuBaCuOy薄膜に、イオン照射したときのC軸の照射量依存性を測定した。イオン種をHeからAuまで変化させ、またイオンのエネルギーを0.85MeVから200MeVまで変化させたときにC軸長の照射量に対する変化率がSe(電子的阻止能)、dJ/dx(primary ionization rate)に対してどういう振舞いを示すか調べた。但し、その際に弾性的はじき出しによる寄与をさし引き、電子励起による欠陥生成の寄与のみに着目した。その結果、電子励起による欠陥生成の効果は、Seのみではスケールされず、dJ/dxを用いるとよくスケールされることを見出した。また、その依存性はdJ/dxの4乗であり、これは、電子励起により形成されたイオンのクーロン反発により欠陥生成がなされた可能性を強く示唆するものである。
石川 法人; 知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 鶴 浩二*; 道上 修*; 神原 正*
RIKEN Accelerator Progress Report, 31, P. 97, 1998/00
高温超伝導体EuBaCuOyにイオンを照射し、C軸長を測定した結果、その伸び率が、イオンの軌跡に沿って誘起されるターゲット中のイオンの密度に依存することが分かった。
佐藤 真一郎; Schmieder, K.*; Hubbard, S.*; Forbes, D.*; Warner, J.*; 大島 武; Walters, R.*
no journal, ,
電子の3次元的な量子閉じ込め効果を利用したIII-V族半導体量子ドット(Quantum Dot: QD)デバイスは、次世代超高効率太陽電池への応用が期待されている。QD太陽電池の実用化にあたっては、QDを高密度に多数積層させる必要があり、近年では歪補償層の導入などによって格子定数の異なるQD層を積層欠陥なしに多数積層できるようになってきた。しかし、単結晶デバイスと比較すれば依然として多くの結晶欠陥が含まれており、それらがキャリア捕獲準位(欠陥準位)となってデバイス特性に悪影響を及ぼしている。今回、積層した量子ドット層中に存在する欠陥準位を明らかにするために、有機金属気相成長(MOVPE)法によってn型ベース層内にInAs量子ドット層を10層埋め込んだGaAs pnダイオード(QDデバイス)を作製し、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)測定を行った。これを、InAs量子ドットを含まないGaAs pnダイオード(参照デバイス)と比較したところ、QDデバイスには参照デバイスには見られない正孔捕獲準位および電子捕獲準位が存在することを見出した。以上より、これら捕獲準位を低減することがQDデバイスの特性改善に必要であると結論できた。